同時廃止か管財事件かは誰が決める?

自己破産には同時廃止と管財事件の2つのタイプがあります。

これらの違いは「破産管財人がつくか否か」です。管財事件には破産管財人がつきますが、同時廃止にはつきません。

破産者は、破産管財人への報酬(最低20万円)を自腹で払わないといけません。そのため、誰もが破産管財人がいない同時廃止を希望します。

もっとも、破産者の側で「同時廃止でいきます。」と決めた上で、自己破産を申し立てることはできません。同時廃止か管財事件かを決めるのは裁判所です。

破産者が同時廃止を希望したにもかかわらず、裁判所によって管財事件にされてしまうケースも少なくありません。

同時廃止か管財事件かはいつ決まる?

東京地裁では、自己破産の申立てをすると、弁護士がその日のうちに裁判官と面接します。これを即日面接といいます。同時廃止か管財事件かは、即日面接での弁護士とのやりとりをふまえて、裁判官がその場で決めます。

弁護士をつけない本人申立てのケースでは、裁判所に申立書を提出してから約1か月後に本人が裁判官と面接します(「審尋」といいます)。何度か審尋を実施した後に、裁判官が同時廃止にするか管財事件にするかを決めます。

そのため、本人申立ての方が同時廃止か管財事件か決まるまでに時間がかかります。

同時廃止と管財事件のふりわけ-現金以外の財産

裁判所はどのような基準で同時廃止にするか管財事件にするかを決めているのでしょうか?

東京地裁や他の多くの裁判所では、破産者が、現金化すれば20万円以上になる財産をもっている場合は管財事件にふりわけ、そのような財産をもっていない場合は同時廃止にふりわけています。

破産管財人の報酬は通常20万円です。そのため、「破産管財人の報酬を支払える財産があれば管財事件にしますよ。」ということです。

20万円以上になれば管財事件になる財産は次のとおりです。

①預貯金

②給与の4分の1

③退職金の8分の1

④保険の解約返戻金

⑤貸付金や売掛金

⑥社内積立金

⑦株式などの有価証券

⑧自動車・バイク

⑨所有不動産

⑩相続財産

⑪事業設備、什器・備品

⑫過払金

以下、ポイントを絞ってみていきましょう。

1.未払い給与

給与は、最低限度の生活を保障するため、法律で4分の1までしか差し押さえることはできないとされています。

自己破産も、破産者の財産に対する差押えとみることができるので、通常の差押えと同じく、4分の1を基準として、その金額が20万円以上であれば管財事件、20万円未満であれば同時廃止とされます。

2.退職金

退職金も生活保障のため4分の1しか差し押さえることはできません。そのため、給与と同じく4分の1が基準になるようにも思えます。しかし、退職金が支給されるのは遠い未来です。それまでに会社が倒産しているかもしれません。

そのような不確実性をふまえて、退職金については8分の1を基準として、この金額が20万円以上の場合に管財事件とされます。

3.保険の解約返戻金

20万円以上の解約返戻金が出る保険があれば管財事件になります。契約者貸付を受けている場合は、解約返戻金から貸付額をマイナスした金額が20万円以上か否かで判断します。

解約返戻金が20万円未満であったり、かけ捨ての場合は同時廃止になります。

4.貸付金・売掛金

貸付金や売掛金は、額面が20万円以上であっても、確実に回収できるわけではありません。

そのため金額だけで判断するのではなく、回収の可能性をふまえて、20万円以上の価値があるかどうかを判断します。回収の可能性がなければ、弁護士が裁判官に事情を説明します。

5.自動車・バイク

購入金額が20万円以上であっても、減価償却期間をすぎていれば価値がないと判断されます。普通乗用自動車の減価償却期間は6年、軽自動車は4年、バイクは3年です。

償却期間が過ぎていなければ、買取り業者の査定額が20万円以上であれば管財事件、20万円未満であれば同時廃止になります。

6.不動産

不動産業者の査定額が20万円以上か否かで判断します。住宅ローンが残っている不動産については、ローンの残高が査定額の1.5倍を上回るときは、オーバーローンで無価値と判断され、財産として評価されません。

7.20万円以上か否かは個別に判断する

破産者が20万円以上の財産をもっていれば管財事件になりますが、20万円以上か否かは、財産の種類ごとに個別に判断します。

【具体例①】

15万円の自動車と10万円の預金があるケース

⇒合計すると25万円になりますが、自動車だけ、預金だけでは20万円未満ですので同時廃止になります。

【具体例②】

15万円の預金と10万円の預金があるケース

⇒それぞれの預金は20万円未満ですが、合計すると「預金」という枠の中で20万円以上になるため管財事件になります。

同時廃止と管財事件のふりわけ-現金

現金以外の財産については20万円がふりわけの基準になりますが、東京地裁では、現金についてのみ33万円を基準としています。

33万円以上の現金をもっていれば管財事件、もっていなければ同時廃止にふりわけられます。

現金について33万円が基準とされた理由は、法令で、標準的な世帯で1か月に必要となる生計費が33万円とされているためです。

手持ちの現金が33万円に満たない場合は、たとえ20万円以上持っていたとしても、破産管財人への報酬は支払えないと判断され、同時廃止になります。

同時廃止と管財事件のふりわけ-免責不許可事由があるケース

破産者に免責不許可事由があれば、原則として、管財事件になります。

免責不許可事由とは、「免責について問題があるケース」です。よくあるのは、破産者がギャンブルやFX、浪費をしていたケースです。

破産者は、免責が許可されると借金を返す必要がなくなります。しかし、免責不許可事由があると、破産管財人の調査を経た上で、裁判所に許可されないと免責されません。このタイプの免責を「裁量免責」といいます。

このように免責不許可事由があると、破産管財人の調査が必要になることから、管財事件にふりわけられます。

もっとも、免責不許可事由があっても、①その程度が軽微であり、②借金の総額が400万円以下であり、③20万円以上の財産または33万円以上の現金をもっていないことが明らかなケースでは、例外的に同時廃止になることもあります。

そのようなケースでは、弁護士が同時廃止にするよう裁判官と交渉します。

同時廃止と管財事件のふりわけ-個人事業主の自己破産

個人事業主が自己破産をする場合は、原則として管財事件になります。

個人事業主は、取引相手や従業員など多くの利害関係人がいますし、借金も大きくなる傾向があるため、破産管財人による調査が必要となるからです。既に廃業している場合でも、きちんと清算されているか否かを調査する必要があります。

もっとも、以下のケースでは、例外的に同時廃止になる余地もあります。

①破産申立ての1年以上前に廃業していて清算が適切になされているケース

②事業が小規模で、生活上の借入れのみであり、金額も500万円未満のケース

このようなケースでは、弁護士が同時廃止にするよう裁判官と交渉します。

同時廃止と管財事件のふりわけ-法人の代表取締役

法人については、利害関係人が多く、財産や負債の状況について調査する必要があるため、例外なく管財事件になります。

法人の代表者についても、法人の債務を連帯保証していたり、法人の株式を所有していることが多く、代表者の破産を処理するにあたって、法人についても調査の必要が生じるため管財事件になります。

法人の代表者が単独で自己破産を申し立てた場合は、裁判所から法人と一緒に申立てるよう指示されます。

同時廃止か管財事件か微妙なケースでは、弁護士が意見書を作成して、裁判官と交渉します。お悩みの方はウェルネス(03-5577-3613)までお気軽にご連絡ください。

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