このページは弁護士 楠 洋一郎が監修しています。

「カードローンやキャッシングなどの借金が増えてしまい返済できない」-このような場合でも自己破産をすれば、借金を免除してもらえます。

とはいえ多くの方がすぐには自己破産に踏み出せず、次のようなことが気になってしまうのではないでしょうか?

☑ 自己破産の手続きはどんな流れで進んでいくの?

☑ 自己破産にはどのくらいの期間がかかるのだろう?

☑ 自己破産を弁護士に依頼するメリットは?自分でできないの?

この記事では、自己破産の一般的な流れを「弁護士に依頼した場合」と「自分でする場合」にわけて解説します。免責までにかかる期間もご紹介しますので、自己破産を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

目次

自己破産の流れは「手続きの種類」によって異なる

実は自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2つの種類があります。

手続きの流れやかかる期間は種類によって変わってくるので、まずは同時廃止と管財事件について簡単にみていきましょう。

1.同時廃止

同時廃止は財産をほとんど持っていない人が破産するときに適用される手続きです。

例えば、現金であれば33万円未満、預貯金であれば20万円未満であれば同時廃止となります。これらの基準額を上回ると管財事件になります。

【自己破産】同時廃止と管財事件の基準は?

同時廃止の場合、自己破産をしても手元の財産をそのまま残しておけます。2019年の司法統計によると、全体の約57%が同時廃止になっています。

2.管財事件

管財事件は財産が一定以上ある人や法律で定められた「免責不許可事由」に該当する人に適用される破産手続きです。

免責不許可事由に該当するのは浪費やギャンブル、FXなどの投機的な行為、財産隠しや債権者隠しなどを行った場合です。

管財事件になると、破産者の一定以上の財産は債権者のために差し出さなければなりません。そのため手元に残しておくことはできません。

2019年の司法統計によると、全体の約40%が管財事件となって終結しています。

なお管財事件には原則的な「通常管財」のほかに「少額管財」という簡易な方法があります。少額管財は、通常管財と比べ、①費用が安い、②スピードが早い、③手間が省けるという3つのメリットがあります。

少額管財とは?通常管財との違いや利用の仕方

東京地裁を始めとする多くの裁判所では、少額管財を利用できるのは弁護士がついている場合に限られます。

3.自己破産は同時廃止がオススメ

一般の方が自己破産するときには、簡単で費用も安い「同時廃止」がおすすめです。同時廃止であれば、自己破産をしても財産がなくならないので、自己破産後の生活についても安心です。

自己破産の流れ(同時廃止)

まずは同時廃止の流れを解説していきます。

【同時廃止の流れ】

① 弁護士に相談する

② 書類を集める

③ 破産の申立をする→即日面接

④ 破産手続開始決定、同時廃止の決定がおりる

⑤ 免責審尋が行われる

⑥ 免責決定がおりる(借金がなくなる)

STEP1 弁護士に相談する

自己破産をするときには、まずは弁護士に相談しましょう。

確かに自分で行うのも不可能ではありません。しかし自己破産には膨大な書類が必要ですし、裁判所とのやりとりもしなければなりません。

適切に進めないと手続きを進行させられず、途中で挫折してしまう可能性も高まります。

弁護士に依頼すればご本人の負担が圧倒的に軽くなります。また弁護士が受任通知を送った段階で債権者からの督促が止まるという大きなメリットもあります。

無理に自分で進めるよりも、まずは一度弁護士に相談してみる方が得策です。

STEP2 書類を集める

①弁護士に依頼する場合

弁護士に依頼する場合でも、最低限の必要書類は自分で集めなければなりません。

自己破産するためには住民票や給与明細書、預金通帳などの資料が必要となります。弁護士に依頼すれば、具体的な書類の集め方について指示を受けられるので、言われたとおりに対応すればそれほど苦労はありません。

また、自己破産をするためには申立書や資産目録等の書類を作成する必要がありますが、弁護士に依頼すると弁護士が作成してくれるので依頼者による対応は不要です。

②自分で進める場合

もし自分で自己破産するなら、どのような書類が必要か、またどこで収集するのかなど全部調べて自力で集めなければなりません。申立書などの書類も全て自分で作成する必要があり、大変な労力がかかるでしょう。

STEP3 申立をする(即日面接)

必要書類が揃ったら、裁判所へ破産と免責(借金をゼロにしてもらうこと)の申立をします。

①弁護士に依頼する場合

弁護士に依頼した場合には弁護士が申立手続きを代行するので、依頼者は何もせずに報告を待っているだけで大丈夫です。また東京地方裁判所では、弁護士がついている場合、「即日面接」が行われます。

即日面接とは、申立て後すぐに弁護士と裁判官が面談をして同時廃止にするか管財事件にするかをその場で決める手続きです。弁護士が説得的な理由を述べて「同時廃止がふさわしい」という意見を出せば、同時廃止になる可能性が高くなります。

同時廃止になれば期間も短く費用も安く財産もなくならないので、破産者にとって大きなメリットがあります。

また即日面接が行われると、その日のうちに破産手続開始決定が出るので手続きにかかる期間も大きく短縮できます。

②自分で進める場合

自分で手続きをする場合には、自力で申立書類をそろえて裁判所へ行き、印紙や郵便切手を買って申立を行い、予納金の納付をしなければなりません。

東京地裁では、本人が申立てをする場合には即日面接が行われません。申立て後すぐに同時廃止にしてほしいなどの意見を述べられないため、破産手続開始決定が出るタイミングが遅くなり、期間も延びてしまうデメリットがあります。

STEP4 破産手続開始決定、同時廃止の決定がおりる

即日面接が行われたらその日に、それ以外の場合には後日に「破産手続開始決定」がおります。

同時廃止は、破産手続きに必要な費用を支払えないことを意味します。そのため、破産手続きが開始されるのと同時に破産手続きが廃止されるので、「廃止決定」が出ることになります。

STEP5 免責審尋が行われる

破産手続き開始の決定と廃止決定が出たら(同時廃止)、しばらくして裁判所で「免責審尋」が行われます。免責審尋は裁判官が破産者と面談して免責するかどうかを判断するための大切な手続きです。

①弁護士に依頼する場合

弁護士に依頼する場合には、弁護士が免責審尋に同行します。裁判官から質問を受けたときにご本人に代わって弁護士が対応したり、必要に応じて弁護士が意見を出すこともできます。

②自分で進める場合

自力で進める場合には、破産者が一人で免責審尋に出席して裁判官からの質問に答えなければなりません。

STEP6 免責決定がおりる(借金がなくなる)

免責審尋で特に問題がなければ、「借金をゼロにします」という免責決定がおります。免責決定が確定したら借金や滞納していた家賃などの負債が正式に免除され、支払い義務がなくなります。

自己破産の流れ(管財事件)

管財事件の流れは次の通りです。

【管財事件の流れ】

① 弁護士に相談する

② 書類を集める

③ 申立をする

④ 破産手続開始決定が下り破産管財人が選任される

⑤ 破産管財人と面談する

⑥ 財産の換価と配当が行われ債権者集会が実施される

⑦ 免責決定がおりる(借金がなくなる)

STEP1 弁護士に相談する

管財事件の場合にも、まずは弁護士に相談しましょう。

同時廃止よりも管財事件の方が複雑になるため、なおさら弁護士のサポートが重要となります。また弁護士が受任通知を発送すると借入先から催促の連絡がこなくなるというメリットもあります。

自分で対応する場合には、債権者からの督促に対応しながら書類集めをしなければならないので負担が重くなります。

STEP2 書類を集める

管財事件の場合でも書類を集めなければなりません。

①弁護士に依頼する場合

弁護士から指示を受けたとおりに書類を集めましょう。破産申立書などの裁判所に提出する書類は弁護士が作成してくれます。

②自力で進める場合

どのような書類が必要か自分で調べて集める必要がありますし、申立書や資産目録、債権者一覧表などの書類はすべて自分で作成しなければなりません。

STEP3 申立をする(即日面接)

①弁護士に依頼する場合

申立ての手続きはすべて弁護士が代行します。依頼者は何もする必要がありません。

東京地裁の場合には「即日面接」が行われて、その日のうちに破産手続開始決定がおります。弁護士に依頼した場合は、少額管財で進めることができますので、その後の進行も早くなります。

②自分で進める場合

自分で裁判所に書類を持参し、印紙と郵便切手を購入して予納金を収める必要があります。

不備がある場合、訂正に応じないと次のステップに進めてもらえません。

即日面接は行われないので破産手続開始決定のタイミングも遅くなりますし、弁護士がついた場合と異なり、通常管財しか利用できないため破産管財人の報酬(予納金)が大幅に高くなってしまいます。

*東京地裁では少額管財の予納金は20万円、通常管財の予納金は50万円以上です。

STEP4 破産手続開始決定が下り破産管財人が選任される

無事に申し立てができたら、裁判所で破産手続開始決定が下りて「破産管財人」が選任されます。

STEP5 破産管財人と面談する

①弁護士に依頼する場合

管財事件の場合、破産手続開始決定後に破産管財人と面談しなければなりません。

面談では破産管財人から借金を返せなくなった理由や財産状況などを詳しく質問されます。

弁護士に破産手続きを依頼している場合、弁護士が一緒に破産管財人と面談し、管財人の質問に対しても、弁護士がサポートします。。

②自分で進める場合

自力で進める場合、破産管財人との面談は一人で対応しなければなりません。

破産管財人からの質問や照会事項にきちんと答えられないと「財産隠し」を怪しまれたりして手続きがスムーズに進められなくなる可能性もあります。

STEP6 債権者集会

破産管財人がつくと、管財人は預かった破産者の財産を換価(現金化)します。換価が終了すると管財人が債権者へ配当を行い、破産手続きが終了します。配当すべき財産がない場合には、破産手続きが廃止さます。

それまでの間に、少なくとも1回は裁判所で債権者集会が開かれます。

①弁護士に依頼する場合

弁護士に依頼すると、債権者集会には弁護士も一緒に出席します。債権者から質問されたときには弁護士が本人に代わって対応します。裁判所や管財人とのやりとりも弁護士が対応します。

②自分で進める場合

自力で進める場合には、破産者が一人で債権者集会に出席しなければなりません。債権者からの質問、破産管財人や裁判所とのやりとりも自分で行う必要があります。

返答に困って黙っていると手続きがうまく進行しない可能性があります。

STEP7 免責決定がおりる(借金がなくなる)

破産手続きが終了すると、裁判所は管財人の意見を参考にして免責するかどうかを決めます。免責が下りると、原則として借金を返済する必要がなくなります。

管財人に「免責不相当」の意見を出されると免責決定を受けるのが難しくなってしまいます。

①弁護士に依頼した場合

弁護士に依頼した場合、管財人には弁護士が対応するので破産者が管財人との関係に神経質になる必要はありません。免責も受けやすくなるでしょう。

②自分で進める場合

自力で進める場合、管財人からの照会に対してどう対応してよいかわからず何もしないでいると、更生するのが難しいと判断され、免責が許可されないリスクもあります。

自己破産にかかる期間【ケース別】

自己破産にかかる期間をケース別にみてみましょう。

1.同時廃止

①弁護士に依頼した場合

弁護士に依頼すると、申立から免責決定までだいたい2か月程度です。

仮に弁護士に依頼してから3ヶ月で申立ができた場合、半年以内に自己破産のすべての手続きを終わらせることができます。

②自分で進める場合

自分で対応すると、書類集めにも手間取りますし申立後もスムーズに進められない可能性が高くなります。

一般の方が破産に必要な書類を作成するのは本当に大変で、「自己破産しよう」と考えてから1年経っても免責を受けられない、といった状況も珍しくありません。

2.管財事件

①弁護士に依頼した場合

少額管財の場合、弁護士に依頼すると申立から免責決定までだいたい3か月程度です。

たとえば弁護士に依頼してから申立てまでに3か月かかった場合、半年程度で免責を受けられる計算となります。

期間が長いように思われますが、弁護士に依頼すれば、サラ金業等からの督促はとまりますので、日常生活に影響はありません。

②自分で進める場合

自力で通常管財事件を進めるのは簡単ではありません。申立前の書類集めだけではなく申立後の管財人からの照会などにも適切に対応しなければならないためです。

破産を申し立てて裁判所から連絡がいくまでは、サラ金業者からの督促もとまりません。

1年かかっても手続きが終わらず、場合によっては裁判所から「取下げ」を促されてしまう可能性もあります。「自分でやろう!」と決めたものの、もしも管財事件を自分で進めるのが難しくなったら、早めに弁護士に相談しましょう。

法テラスを使った場合の自己破産の流れ

「法テラス」を使うと自己破産の流れはどのようになるのでしょうか?

1.法テラスと契約している弁護士を探して依頼する

法テラスの民事法律扶助を適用するには、法テラスと契約している弁護士に依頼しなければなりません。法テラスの地方事務所で無料相談を受けるか、法テラスと契約している弁護士事務所で法律相談を受けましょう。

2.法テラスで審査を受けて通過する

相談を受けてもすぐに動いてもらえるわけではありません。法テラスを利用できるのは収入や資産が一定以下の人に限られています。

そのため、給与明細書などの必要書類をそろえて法テラスに提出し、資力要件を満たすかどうかの審査を受ける必要があります。審査には約2週間程度かかるので、その間は債権者からの督促が止まりません。しかも必ず審査に通るとも限りません。

無事に審査に通れば、その後の自己破産の流れ自体は法テラスを使わない場合と同じになります。

3.法テラスを利用するときの注意点

法テラスの地方事務所で無料相談を受ける場合、担当弁護士は選べません。債務整理を得意としない弁護士にあたってしまう可能性があります。

また審査に時間がかかるので、その間に債権者から督促が届き続けるデメリットもあります。急いで破産手続きを進めたいときには不向きといえるでしょう。

自己破産の相談は弁護士へ

自己破産の流れは複雑なので、当初から弁護士に任せる方がスムーズに進められます。無事に免責を受けられる可能性も高くなり、大きなメリットを受けられるでしょう。

ウェルネスでは自己破産に積極的に取り組んでいますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。