「自己破産をすると借金は必ず免除されるの?免除されなかったらどうしよう…。」

-自己破産を検討している方のなかにはこのような悩みを抱いている人もいるでしょう。

自己破産をしても借金が免除されないケースは確かにあります。

借金が免除されなくなるような問題事例は11のケースに分類されます。このような問題事例を「免責不許可事由」といいます。

このページでは、免責不許可事由の内容や、免責不許可事由があっても借金が免除される余地があることを弁護士 楠 洋一郎が解説しています。

自己破産の免責不許可事由とは?

自己破産は、破産者の財産を現金化して債権者に配当し、残った借金を免責してもらう手続です。借金が免責されると返済する必要がなくなります。

破産者は、法律で決められた免責不許可事由に該当しない限り、裁判所に免責を許可してもらうことができます。

破産法という法律で11の免責不許可事由が定められています。免責不許可事由のどれかひとつにでも該当すれば、イエローカードが出された状態になります。つまり借金が免責されない可能性が出てくるということです。

自己破産の11の免責不許可事由

破産法には、次の11の免責不許可事由が挙げられています。

①財産隠し

債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

②不当な債務負担

破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。

③義務のない負担

特定の債権者に対する債務について、その債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

④浪費・ギャンブル

浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

⑤詐欺的な信用取引

破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、その事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

⑥書類の偽造

業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。

⑦虚偽の債権者名簿

虚偽の債権者名簿を提出したこと。

⑧説明拒否・虚偽説明

破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと。

⑨職務妨害

不正の手段により、破産管財人らの職務を妨害したこと。

⑩再度の破産

以前になされた免責許可の決定等が確定した日から7年以内であること。

⑪義務違反

破産者が説明義務、重要財産開示義務、協力義務等に違反したこと。

これらの免責不許可事由のうち、問題になりやすいのが、④の「浪費又は賭博その他の射幸行為」です。

買い物や飲食、風俗、ギャンブルなどに分不相応なお金を使って借金を重ねたケースがこれにあたります。自己破産を希望される方のなかには、買い物依存症やギャンブル依存症になっている方も少なくありません。

ギャンブルが原因でも自己破産できる?

【自己破産】免責不許可事由があっても裁量免責の余地あり

免責不許可事由のどれかに該当しても、1発レッドカードで直ちに免責不許可になるわけではありません。破産するまでの経緯や現在の状況、裁判所の調査にどれだけ協力したか等の事情をふまえて、免責を許可してもよいと考えられるケースについては、裁判所は免責を許可することができます。

このタイプの免責を「裁量免責」といいます。

免責不許可事由に該当するケースは、慎重な調査が必要となるため管財事件となり破産管財人が選任されます。

破産管財人は、破産者の状況を調査して、裁量免責を認めるべきかどうかを判断します。浪費やギャンブルが原因となっているケースでは、これらをやめて、専門のクリニックで治療を受けているといった事情があれば、裁量免責が認められやすくなります。

破産者が重い病気にかかっていたり、高齢で収入の見込みがない場合も裁量免責の可能性が高くなります。

【自己破産】免責不許可事由で同時廃止になりうるケース

免責不許可事由に該当すると、原則として管財事件になりますが、次の3つの全てにあてはまれば、同時廃止になることもあります。

①免責不許可事由の程度が軽微である。

②借金の総額が400万円以下である。

③20万円(現金は33万円)以上の資産がないことが明らかである

このようなケースでは、弁護士が意見書を作成し、即日面接で、同時廃止にするよう裁判官と交渉します。同時廃止であれば、2、3か月後に実施される免責審尋期日に出席するだけで免責が許可されるため、破産者の負担が大幅に軽くなります。

自己破産の即日面接とは?同時廃止にするためのコツを解説

【自己破産】免責が許可されなかったケース

東京地裁で実際に免責不許可になったケースを紹介します。

①財産隠し

120万円の解約返戻金がでる保険契約があることを破産管財人に言わず、解約返戻金を担保に契約者貸付けを受けていたケース

②財産隠し

自己破産の直前に、自分の給与を他人の口座に振り込ませて隠したケース

③不当な債務負担

弁護士に債務整理を委任した後、携帯電話10台をクレジットカードで購入し、不当に低い金額で転売したケース

④ギャンブル

自己破産を申し立てる前の3年間、海外でひんぱんにカジノ賭博を行い、400万円以上の債務を負ったケース

⑤射幸行為

株式投資、FX、先物取引で8000万円以上の損失を出したケース

⑥詐術による信用取引

無職であることを隠して、ボーナス等で返済できると偽って200万円を借り入れたケース

⑦帳簿の偽造・変造

破産手続が始まった後もFXをしていたことを隠すため、銀行の取引履歴を変造したり取引報告書を偽造したケース

⑧虚偽の債権者名簿の提出

1000万円以上借りていた個人の債権者を債権者名簿にわざと記載しなかったケース

⑨虚偽説明

賃料収入のある不動産を所有していたが、それを隠して破産を申し立て、破産管財人には不動産を所有していないと嘘の説明をしていたケース

⑩破産管財人の職務妨害

破産者が自宅から退去しなかったため、任意売却が難航し、破産手続が遅れたケース

⑪再度の免責申立て

前回の免責確定から2年9カ月後に自己破産を申し立てたケース

⑫破産手続上の義務違反

不動産の売却に際し350万円を受けとったが、使途についてあいまいにしか説明せず、

破産管財人との面談にも正当な理由なく応じなかった

【参考文献】

東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情(続)

【自己破産】免責不許可事由があってもあきらめない

東京地裁では、裁量免責も含めると破産者の90%以上が免責を許可されています。ウェルネスの弁護士は、免責不許可事由に該当する自己破産を数多く受任し、全てのケースで免責許可を獲得してきました。

免責不許可事由に該当するからといってあきらめず、まずはウェルネス(03-5577-3613)までご相談ください。