車をお持ちの方や車の購入を考えている方が自己破産をしようとする場合、次のようなことが気になるのではないでしょうか?
☑ 自己破産をすると車はどうなるの?
☑ 自己破産をしても車を残せる方法はある?
☑ 自己破産を申請した後に車を買ってもいいの?
このような疑問をお持ちの方のために、自己破産をしたときに車がどうなるか、車を残すための方法、破産後に車を購入できるかについて、弁護士 楠 洋一郎が解説しています。
目次
【自己破産】自動車ローンがある車はどうなる?
自動車ローンで買った車の所有権は、ローンを完済するまではローン会社に留保されています。
そのため、自己破産を申し立てると車はローン会社に引き取られてしまいます。ローン会社から車の所有者に連絡が入り、日程調整をした上で担当者がガレージまで車を引き取りに来ます。
【自己破産】自動車ローンがない車はどうなる?
1.耐用年数が経過した車-自己破産しても残せる
東京地裁や他の多くの裁判所では、耐用年数を経過した車は価値がない物として扱っています。車の耐用年数は、普通乗用車で6年、軽乗用車で4年、バイクで3年です。
そのため、破産管財人によって現金化されることはなく、破産者の手元に残しておくことができます。
【例外】
高級車の場合は、耐用年数が経過していても、それなりの金額で売却できる可能性があるため、業者による査定が必要となります。もし、20万円を超える査定がつけば、破産管財人が引き取り現金化します。
2.耐用年数が経過していない車-20万円以下なら自己破産しても残せる
耐用年数が経過していない車の場合、査定額によって手元に残せるかどうかが変わってきます。
査定額が20万円を超えると、破産管財人が車を引き取って売却し、それによって得たお金を債権者に配当します。そのため手元に残しておくことはできません。
査定額が20万円以下であれば、現金化するだけの価値はないとみなされ、手元に残しておくことができます。
自己破産して自動車ローンがある車を残す方法
1.ローンを完済する
自己破産を申請した時点で自動車ローンが残っていれば、ローン会社によって車が引き上げられてしまいます。もっとも、ローンの残金を全て支払った上で、車が次のいずれかの条件を満たしていれば、手元に残しておけます。
①耐用年数が経過している
②査定額が20万円以下である
2.自分でローンを払うのはNG
自己破産してローンがある車を残すために「なんとか自分でお金をかき集めてローンを完済しよう。」と考えるかもしれません。しかし、これはご法度です。
破産をすると全ての債権者を公平に扱わないといけません。限られたお金で自動車ローンを返済すると、ローン会社だけがいい思いをして、他の債権者は本来であれば得られたはずの配当が得られなくなってしまいます。
このように特定の債権者だけに弁済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。偏波弁済は破産法が定める免責不許可事由にあたるとされています。免責不許可事由にあたると、免責されないリスクが生じます。
⇒自己破産の免責不許可事由とは?
3.家族にローンを払ってもらうのはOK
自分のお金で自動車ローンの残金を払うのはNGですが、家族や親族にローンの残金を払ってもらうのは問題ありません。家族や親族のお金は、もともと債権者があてにできるものではないので、偏波弁済とはいえないからです。
家族や親族にローンの残金を払ってもらうことができれば、車を手元に残しておくことができます。
自己破産して自動車ローンがない車を残す方法
上で解説したように耐用年数が経過しているか、経過していなくても査定額が20万円以下の車であれば手元に残しておくことができます。もっとも、これらの条件を満たさない車でも次の方法により手元に残すことができます。
1.自由財産の範囲を拡張してもらう
破産管財人と交渉し、自由財産の範囲を拡張してもらうことができれば、車を手元に残しておけます。
自由財産の範囲を拡張すると破産者が手元に残しておける財産が増えるため、債権者への配当が少なくなってしまいます。
そのため、「破産者が重い病気にかかっており、車がないと通院できない」とか「家族の介護のために車がぜひとも必要である」といった、よほどの事情がなければ、自由財産の範囲は拡張されないでしょう。
⇒自由財産の範囲の拡張とは?拡張の目安や考慮される3つの要素を解説
2.車を買い取る
破産手続がスタートした後に、破産管財人と交渉し、時価で車を買い取ることができれば、引き続き車を使えます。
破産者が勝手にローン会社に自動車ローンを支払うと偏頗弁済になりますが、破産管財人から時価で買い取っても、払ったお金は管財人によって債権者に公平に分配されるため、偏頗弁済にはなりません。家族や親族から買い取り資金を借りて支払ってもOKです。
3.自己破産する前に車の名義変更をしてもいい?
車を手元に残しておくため、自己破産をする直前に、車の名義だけ家族や友人に変更して、使い続けることはNGです。
このようなことをすると、財産を隠したとして免責不許可事由に該当し、借金が免責されないリスクが生じますので、絶対にやめましょう。
自己破産の手続き開始後に車を買える?
自己破産の手続がスタートした「後」に、破産者が得たお金は全て自由財産となります。そのため、自己破産の開始後に、自分で稼いだお金で車を買うことは何ら問題ありません。
ただ、弁護士から債権者に受任通知を送った時点で金融機関のブラックリストにのっているため、自動車ローンを組むのは難しいでしょう。そのため、現金一括で購入することになります。