免責審尋とは

免責審尋とは、自己破産の手続が始まった後、借金を免責するか否かを判断するために裁判官が破産者にヒアリングすることです。裁判所で免責審尋が行われる日のことを免責審尋期日といいます。

免責されれば借金を返済する必要がなくなります。

債権者も免責審尋に立ち会い、免責についての意見を述べることができます。裁判官は、免責審尋期日において、破産管財人や債権者、破産者の意見を聞いた上で、免責するかどうかを決めます。

東京地裁では例外なく免責審尋が実施される

免責審尋は必ず実施されるわけではありません。実施するかどうかは裁判所ごとに異なります。裁判所によっては、免責について問題のあるケースのみ免責審尋を行うところもあります。

東京地裁では、債権者が意見を表明する機会を保障するため、全ての自己破産について免責審尋を実施しています。

免責審尋の流れ

自己破産には、破産者に資産がないときに利用される「同時廃止」と一定以上の資産があるときや免責をする上で問題があるときに利用される「管財事件」の2つのタイプがあります。
同時廃止と管財事件の違い

以下では、同時廃止と管財事件について、免責審尋の流れを解説します。

1.同時廃止の免責審尋の流れ

同時廃止の免責審尋は、自己破産を申し立ててから2、3か月後に行われます。

東京地裁では、免責審尋は、毎週火曜日と木曜日に、東京地裁6階の626号法廷で、集団審尋の形で実施されます。集団審尋とは、複数の破産者を一か所に集めて、審尋を行うことです。

破産者と弁護士が待ち合わせをして法廷に行くと、他にも多くの破産者と弁護士がいて、順番待ちの行列ができています。

その後の流れは以下の通りです。

  • 1. 列の最後尾に並んで、順番がくると職員から整理券を受けとります。

  • 2. 法廷の前で待機します。

  • 3. 時間になると、職員の案内で一斉に法廷に入り、傍聴席に座ります。
    ・傍聴席は満員になることが多いです。
    ・破産者の家族や友人は法廷に入ることができません。
    ・債権者も出席することができますが、実際に出席するケースはまれです。

  • 4. 全員着席すると、裁判官が法廷に現れます。裁判官が傍聴席に向かって、免責審尋の意味や、免責が確定してから7年間は自己破産をすることが難しくなること等を説明します。

  • 5. 裁判官の前に2つのテーブルがあります。職員が整理券を番号順に読み上げ、前方のテーブルに着席するよう指示しま
    す。奇数と偶数でテーブルが異なります。

  • 6. 自分の番がくると弁護士と一緒にテーブルに座ります。裁判官から「住所や本籍に変更はありますか?」と確認されます。

  • 7. 特に変更がなければ「ありません。」と回答して終了です。傍聴席には戻らず弁護士と一緒にそのまま法廷の外に出ます。

免責審尋はこれで終了です。最初は緊張されていますが、あっという間に終わってしまうので拍子抜けされる方が多いです。

依頼者が法廷に来ることはもうありません。弁護士と会うのもこの日が最後になるでしょう。

管財事件の免責審尋の流れ

東京地裁では、管財事件の免責審尋は、債権者集会と同時に実施されます。場所は、家庭裁判所が入っているビルの5階にある債権者集会場です。

破産者と弁護士が待ち合わせをして集会場に行くと、他にも多くの破産者や弁護士、破産管財人がつめかけています。

その後の流れは以下の通りです。

  • 1. 弁護士が集会場の受付で裁判所の職員に破産者の氏名を告げます。

  • 2. 集会場の中で椅子に座って待機します。

  • 3. 集会場の前方に複数のテーブルが置かれています。職員が順番に破産者の氏名を呼び、「〇番テーブルに来てください。」と誘導します。指定されたテーブルに裁判官と破産管財人、破産者、弁護士が着席します。まれに債権者が来ることもあります。

  • 4. 破産管財人が破産者の資産状況などを説明し、配当に回す財産がなければ、破産手続を終了すべき旨の意見を述べます→裁判官が異時廃止の決定をします。

  • 5. 特に問題がなければそのまま免責審尋期日に移行します。

破産管財人は、免責審尋期日の前に、免責についての意見書を裁判所に提出し、裁判官と打ち合わせをしています。破産管財人が免責について問題ないと考えていれば、「免責が相当である」という意見書を提出しています。

免責審尋期日では、裁判官が破産管財人に「書面の通りでよろしいですか?」と確認するだけです。債権者が来ていなければ、破産管財人が詳細な説明することはありません。

債権者が債権者集会に出席し、口頭で異議を述べたとしても、隠し財産を指摘された等よほどの事情がない限り、破産管財人の意見通りに免責は許可されます。

免責審尋期日の前に、債権者から書面で異議が出ていれば、破産者の弁護士が、異議に理由がないことを記載した書面を、事前に破産管財人に提出します。

もし破産管財人が免責を許可できないと考えている場合は、すぐに「免責不相当」の意見を出すのではなく、債権者集会が続行になることが多いです。この場合、2,3カ月後に再び債権者集会が開かれ、その際に免責審尋期日もあわせて行います。

免責審尋の流れ

同時廃止にせよ、管財事件にせよ、免責が許可された場合は、免責審尋期日の約1週間後に、裁判所から免責許可決定が出ます。

免責許可決定が出ただけでは、まだ免責されたことにはなりません。免責されるためには、免責許可決定が「確定」する必要があります。

免責許可決定が出てから約2週間後に、その事実が官報に掲載されます。官報に掲載されると15日後に免責許可決定が確定します。

つまり、免責許可決定が出てから約1か月で確定することになります。確定すれば借金を返す必要がなくなります。

また「復権」といって破産手続き中の職業制限が全て解除されます。