自己破産には簡易に進められる同時廃止と破産管財人が慎重に調査する管財事件があります。

同時廃止と管財事件の大きな違いは手続きにかかる費用です。同時廃止は2万円弱ですが、管財事件はそれより約20万円高くなります。

「お金がないから自己破産をするのに20万円なんてとても払えない!」という方がほとんどでしょう。

自己破産をする方にとって同時廃止になるか管財事件になるかは死活問題といっても過言ではありません。

全国で最も破産事件を取り扱っている東京地裁では、同時廃止になるか管財事件になるかは、弁護士が自己破産を申し立てた直後に行われる裁判官との面接で決まります。

この面接のことを即日面接といいます。

このページでは即日面接の流れや即日面接で同時廃止にしてもらう上でのポイントについて、弁護士 楠 洋一郎が解説しています。

自己破産の即日面接とは?

即日面接とは、自己破産を申し立てた当日に、裁判官が弁護士と面接し、弁護士とのやりとりをふまえて、その場で同時廃止にするか管財事件にするかを決める手続です。

即日面接は東京地裁で採用されている手続です。裁判官と面接するのは弁護士だけで、破産者本人の立会いは認められていません。面接時間は10分~15分程度です

即日面接は、破産申立ての当日だけではなく、翌日から3営業日以内であれば実施してもらうことができますが、ほとんどの弁護士は申立て当日に即日面接に臨みます。

即日面接で同時廃止とされた場合は、当日の午後5時に、裁判所から破産手続開始決定と同時廃止決定が出されます。

管財事件とされた場合は、翌週水曜日の午後5時に破産手続開始決定が出されます。

自己破産で即日面接できるのは弁護士のみ

裁判官と即日面接をするのは弁護士のみです。即日面接は、裁判官が短時間のヒアリングだけで同時廃止にするか、管財事件にするかを決める手続です。

弁護士であれば、事前に破産者の状況を十分にリサーチし、法的な検討もすませているため、面接の場で、裁判官と活発に意見交換をすることができます。

これに対して、一般の方の場合は、十分なリサーチや法律面での検討ができていないことが多く、即日面接に対応するのは難しいと考えられます。

そのため、弁護士をつけていない本人申立て事件では、即日面接は行われません。司法書士をつけた場合、司法書士は弁護士と異なり破産者の代理人にはなれませんので、即日面接は行われません。

これらの場合、申立ての約1か月後に、本人に裁判所に来てもらい、裁判官が本人と面接(「審尋」といいます)をして、同時廃止か管財事件か決めることになります。

裁判官が一度のヒアリングでは不十分と判断した場合は、再度、審尋の期日がセッティングされます。

自己破産の即日面接で同時廃止にするためのコツ

裁判官は、即日面接をしながらその場で、同時廃止にするか管財事件にするかを決めます。

裁判官に調査の必要があると判断されると、管財事件にされてしまいます。「よくわからないところがあるので、もう1回面接に来てください。」という展開にはならないのです。

裁判官に「調査の必要がある」と思われないように、弁護士が事前に以下のポイントについてリサーチし、即日面接で裁判官にしっかり説明することが大切です。

1.借金の原因

借金が数百万円あるにもかかわらず、単に「生活費が足りませんでした。」と説明するだけでは、借金の原因について調査する必要があると思われ、管財事件になる可能性が高くなります。

自己破産を申し立てる前に、弁護士が依頼者から、借金をしてしまった原因について詳しくヒアリングします。

2.お金の流れ

破産申立てをする際、裁判所に対して、破産者の過去2年分の預金通帳を提出します。提出した預金通帳は、裁判所の書記官が入念にチェックし、問題があれば即日面接の前に裁判官に報告します。

☑ 会社勤めなのに給与の振り込みが記帳されていない

☑ クレジットカードを利用しているのに引き落としの履歴がない

☑ 残高がマイナスになっている(=定期預金を担保とする貸付の可能性がある)

このようなケースでは、裁判官に「他にも預金口座があるのでは?」と思われ、調査が必要として管財事件になる可能性が高くなります。通帳に個人名での入金がある場合は、「個人からの借入れでは?」と裁判官からつっこまれます。

裁判官から何を聞かれても答えられるように、弁護士がお金の流れについて事前にリサーチしておきます。

3.不動産の査定額

住宅ローンつきの不動産がある場合、即日面接で1.5倍以上のオーバーローンであることを疎明できないと管財事件にされてしまいます。疎明資料として、不動産業者2社以上の査定書が必要です。

住宅ローンの残高が査定額の1.5倍以上であれば、同時廃止になります。破産を申し立てる前に、弁護士が2社以上の不動産業者に依頼して、査定書を作成してもらいます。

4.保険の状況

保険の解約返礼金が20万円以上あると管財事件になります。破産者は、破産を申し立てるにあたって、保険ごとの解約返戻金の額を裁判所に報告しないといけません。

裁判所は、預金通帳や源泉徴収票、確定申告書を見て、保険について報告もれがないかをチェックしています。報告もれがあると、解約返戻金が20万円未満であっても、調査が必要として、管財事件にされることがあります。そのため、弁護士が事前に保険の契約状況を確認しておきます。

5.過払金

10年以上にわたってサラ金業者との間で貸し借りを繰り返していれば、過払金が発生している可能性があります。完済済みであっても同様です。

20万円以上の過払金が発生しており回収が見込める場合は、管財事件になります。取引期間や利息から過払金の存在が見込まれるにもかかわらず、調査がされていない場合は、破産管財人に調査させるため管財事件にされることがあります。

事前に弁護士が引き直し計算をして、過払い金の有無や金額を調査しておきます。

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